高橋 彩加
2020年度東京大会
大賞
どんな壁だって跳び越えられる!

高橋 彩加さん筑波技術大学大学院

受賞プランルワンダのろう者カフェでサスティナブルな就労をサポート
なぜCVG(九州大会代表の方は大学発ベンチャー・ビジネスコンテスト)に応募したのですか?
できるだけ持続可能な方法でルワンダ共和国(以下、ルワンダ)のろう者の力になるためにはどうしたらいいか。ということを考えて、ビジネスプランを考案したことがきっかけです。そこでビジネスコンテストを探していたときに、全国の学生が応募できるCVGのサイトを拝見して、自分も挑戦してみたいと思いました。
青年海外協力隊としてルワンダのろう学校で2年間活動し、そこで出会ったろう者の力になりたいと、自分の専門性を磨くために大学院に入学しました。大学院ではルワンダのろう者の就労支援に関する実態調査の研究を行っていて、その研究成果をより実働に近い形にアレンジしたものが今回のビジネスプランです。
大学院で身につけた専門性を学生の立場でアピールできるCVGのコンテストに魅力を感じました。
ビジネスプラン作成やプレゼンで苦労した点は?
コロナ禍で現地に行けない状態が続く中で、収支予想など、より具体的なビジネスプランをブラッシュアップすることに苦労しました。
最終的に、東京大会の審査会でお会いした審査員の方から、現地で飲食店を営む経営者の方とおつなげしていただきました。そこで、ヒアリングの機会を頂戴できたことで、現地で飲食店を運営する際に必要な予算や収支予測などを立てることができ、今後の見通しがより具体的に持てるようになりました。
受賞して何が変わりましたか?
自分のビジネスや目指している目標に自信が持てるようになりました。大学院ではルワンダのろう・難聴者の就労についての研究をしていましたが、日本では同じ研究をしている人もいなく、ルワンダについてもあまり知られていないと感じることが多くありました。自分自身、熱意はありましたが、対象者をごく一部に絞ったこのビジネスプランは、大衆に認められるものではないのではと考え、あまり自信を持てずにいました。
しかし、CVGの審査会を通して出会った様々な方に、激励のお言葉をいただき、自分が目指してきたことは無駄ではなかったと実感することができました。そこで、「ルワンダのろう者の力になりたい」という自分の目標をしっかりと人に伝える機会を増やして行くことができるようになり、国内外問わずたくさんの賛同者を集めることができました。
起業した経緯を教えてください。
私は小学生の頃から国際協力を仕事にしたいと思っていました。そこで青年海外協力隊してルワンダのろう学校に赴任したことにより、現地の人々の力になるために必要なものは、「専門技術」と「資金」だと実感しました。
そこで大学院では、自分の「専門技術」を習得するため、聴覚・視覚に障害のある人が学ぶ大学である筑波技術大学に入学し、その中の情報アクセシビリティ専攻という障害がなくても入れる唯一の学部でろう・難聴者のための情報保障について専門的に学びました。
また、研究を通してルワンダのろう者の就労支援について研究する中で、学校から就労に移行するプロセスにおいて支援を行うことが必要であるという結論に至りました。そこで、持続可能的に就労支援を行う上で、その事業の中で「資金」を確保して回す必要があると考え、ビジネスとして事業を行う、起業という選択に至りました。
起業して何が変わりましたか?
現状ではまだ法人登記には至っていません。また進捗を追って報告させていただければ幸いです。
資金調達方法について教えてください。
ルワンダでろう者が働くカフェを運営するために、まずは開店資金となる初期投資はクラウドファンディングなどを通して、賛同してくださる人々と協力しながら調達したいと考えています。
事業を動かし、運営していく段階になったときは、カフェでのサービス、現地企業とのサブスクリプション契約、手話教室イベント、焙煎豆や関連グッツの輸出、などを通して、現地でお金が回る仕組みを組み立てます。
10年後、20年後の夢は?
ルワンダのろう者カフェを通して、10年以内にルワンダで実現させたいことは3つあります。一つは「ろう者のエンパワメントの向上」です。現状で、ルワンダではまだろう者は運転免許が取れないなど、隣国に比べて改善すべき事項が多いように感じます。そういった課題について議論できるろう者の育成を目指して、ろう者のカフェで就労支援を行うことによって、団体・個人としてのエンパワメントを高めます。
2つ目は、「大学生への情報保障の制度化」です。聴覚に障害がある学生が授業を受けるには、音声を文字や手話に変える形での「情報保障」を行う必要があります。引き続きルワンダでの研究を進めながら、適切な「情報保障」の形を現地の人たちと一緒に探って行きます。
3つ目は、「ろう学校の学費の無償化」です。2003年から公立校の学費は無償化になっているものの、私立で運営される特別支援学校の学費は無償化になっていないことを問題視しています。そこで、カフェを契機として集まった理解者や仲間たちとアドボカシー(政策提言)活動を行うことによって、この目標を達成したいと考えています。
最後に喜びのコメントをお願いいたします。
この度は大賞という素晴らしい賞をいただき、大変うれしく感じております。ありがとうございます。私は以前ルワンダに滞在し、2年間ろう学校で活動をしていました。明るく元気いっぱいな子ども達に元気をもらう毎日でしたが、「耳が聴こえないと仕事ができないのではないか」と将来に不安を抱く子どもが多くいることに課題を感じていました。どうすれば彼らが仕事に就くことができるのかと考え、着想を得たのがこのビジネスプランです。応募にあたっては、遠く離れた国の人々の課題を理解していただけるのだろうか。と不安に思うこともありました。しかしこのような賞をいただき、審査員や関係者の方々からたくさんの激励のお言葉をいただいたことで、私の目指していることは間違っていなかったのだと自信が持てるようになりました。ルワンダに渡航できる日を夢見て引続き努力してまいります。